444球目 宇宙人のピッチングは予測できない

 8回裏のマウンドに上がったのは宇宙人・火星ひぼし



 タコのようにクニャクニャした気持ち悪いフォームから、ボールが微妙に変化するムービングファストボールを投げる。これは打ちにくい。



「いでぇ!」



 あちゃー、踏み込んできた福口ふくぐちにデッドボール。これは痛い。



 次の上村うえむらは送りバントの構え。打球はピッチャー正面で、ゲッツーコース。



「セカン!」


「了」



 火星ひぼしは振り向きざまにセカンドへ送球。しかし、送球が高くなってしまいオールセーフ。



火星ひぼし君、落ち着いてー!」


「俺様たちがついとるでー!」



 無死1・2塁で、増川ましかわは送りバントの構えだ。火星ひぼしは2球連続で高いボール球を投げてしまう。アカン! 無表情だが、内心テンパってる。



 俺はマウンドへ行って、彼をリラックスさせる。



「落ち着けよ、火星ひぼし。宇宙で円盤が壊れるよりマシだって。命取られるワケじゃないし、まだ最終回じゃないからさ」


「わかったんだ。ありがとう、水宮みずみや君」



 火星ひぼしのテレパシーの声ははずんでいた。大丈夫そうだ。



 増川ましかわが送りバントを決めて1死2・3塁になる。それでも、火星ひぼしは落ち着いて、低目にボールを投げる。



 利根橋とねばしの初球スクイズに慌てず、東代とうだいへボールトス。彼の長い手が活きてホームアウトになった。



 鈴村すずむらをショートゴロに仕留めて0点締め。ナイスピッチン!



水宮みずみや君、お礼にオラゴン星に招待するんだ」


「いや、いいよ。そこまでしなくても……」



 地球から離れたオラゴン星から帰ってきたら、同級生がみな老人になってそうだし……。



(続く)

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