442球目 IQ156のピッチングに酔いしれない

 7回裏のマウンドには、東代とうだいが立った。自らのバットで取った点を、自らのバットで守り切れるか。



「ライト、バック、バック、OK! レフト、カモン、カモン、OK!」



 左打者の白木しらきに対して、ライトをフェンスピッタリ、レフトを芝の切れ目まで前進させるという謎のシフトを敷いてきた。



「レッツ! インジョイ・ザ・ベースボール!」



 東代とうだいは軽やかに左足を上げて、内角低めインローにストレートを投げた。



「おわっ!」



 痛烈な打球が俺のグローブを弾く。慌てて拾い、何とかアウトに出来た。



「ナイスファースト!」


「ハハハ。ど-も」



 次の友永ともながに対しては、レフトもライトと同じようにバックさせる。常識的に考えたら高目を攻めるが……。攻めたのは真ん中低目。



「またか」



 今度はファーストゴロ。落ち着いてさばいてツーアウト。



「ナイスファースト!」


「わざと打たせてねぇよな?」



 3番の鮎川あゆかわはアウトコースのストレートを流して、ファースト近辺のファールフライ。捕りますよ、捕りゃいいんだろ。



「アウト、チェンジ!」


「ナイスファースト!」



 東代とうだいは満面の笑みを見せる。IQ156が導き出した計算は、俺の方に打たせるピッチングだった。



(続く)

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