440球目 手首をひねり過ぎない

 大柴おおしば浜甲はまこう打線によって、シュートを多投させされる。



 津灯つとう千井田ちいだを打ち取るも、火星ひぼし四球フォアボールで出してしまう。



「8番ピッチャー烏丸からすま君」



 烏丸からすまはアウトコースに強い。大柴おおしばはインコースにストレートやスライダーを投げ急ぐ。カウント1-2になって、内角低めインローにスライダーを投げた。



「カアアア!」



 烏丸からすまの打球がピッチャー前に転がる。大柴おおしばは落ち着いてグローブに入れてから、ボールをつかむ。



大柴おおしば、早う!」



 ファーストの鈴村すずむらにせっつかれて、大柴おおしばは手首をひねって素早く投げた。リリースする瞬間、手首に激痛が走る。



「あああああああああああああああ!!」



 送球が高くなり、烏丸からすまはセーフになる。大柴おおしばは涙を拭い、マウンドを降りてベンチへ向かう。



「ピッチャー大柴おおしば君に替わりまして、増川ましかわ君」



 シュートの多投による左手首の痛みで、大柴おおしばは無念の途中降板となった。彼女はタオルを頭からかぶって、涙顔を隠した。



(続く)

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