438球目 シュートに頼り過ぎない

 6回表の攻撃前、グル監が俺に尋ねてくる。



「ねぇ、水宮みずみや君。スライダーとシュート、どっちが投げにくい?」


「シュートですかね。手首痛めたことあるんで」



 スライダーはストレートとほぼ同じ握りで投げやすい。しかし、シュートはツーシームとほぼ同じ握りだが、手首をひねって投げるため、かなり負担がかかる。まぁ、手首をひねらずにシュートを投げるのも可能だが、俺の場合はあまり変化しなかったので、今は封印している。



「じゃあ、山科やましな君と番馬ばんば君、スライダー狙いでインコースを思いっきり打ってね。水宮みずみや君は外のスライダーで」



 グル監の指示で、山科やましなさんはインコースにくるスライダーを何度も引っ張る。5球粘るも、6球目のシュートを打ち損じてファーストゴロに倒れた。



「おりゃあ、真っすぐこんかい!」



 番馬ばんばさんに対しては外のシュート一辺倒で、三球三振。



 俺には初球からスライダーが来たので、レフト前へ流し打った。レフト前ヒット。



 宅部やかべさんはスライダーやストレートをことごとくカットする。しかし、7球目のシュートでセカンドゴロに倒れた。



「肉を切らせて骨を断つって感じやね」



 津灯つとうが俺にグローブを渡しながらつぶやく。その言葉の意味を、次の回で思い知ることになった。



(続く)

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