433球目 左バッターは左ピッチャーを得意としない

「ピッチャー鮎川あゆかわ君に替わりまして、大柴おおしば君」



 鮎川あゆかわのシンカーかカーブをすくい上げてホームラン狙ってたのにぃ。大柴おおしばは左のサイドスローの軟投なんとう派(変化球を得意とするピッチャー)。左の俺に左のPをぶつけるなんて、邪悪すぎる。



「よろしくお願いしまーす!」



 丁寧なあいさつと屈託くったくのない笑顔の好投手、だが、俺は絶対に騙されないぞ。厳しいコースを突いてくるに決まってる。



 彼女はプレートの端を踏んで、俺の体に当たりそうなボールを投げてくる。



「ストライクッ!」



 スライダーが外角低めアウトロー一杯に入った。鮎川あゆかわと同様に、こいつもコントロールがいい。



 だから、ベース寄りに立ってもぶつけることはないだろう。これで外のコースは打ちやすくなるが、内は打ちづらい。きっとインコースを攻めてくる。俺はそれを打ちにいく。



 2球目は狙い通りの内角高めインハイのストレート。瞬時に体を開いて打つが、バットの出が早すぎた。ファールだ。



 3球目はどこを攻めるか。キャッチャーは外に構えている。1球遊ぶつもりだ。ボールは外へ、急に曲がってきた。



「ストライク、アウトォ!」



 ボールゾーンからストライクゾーンに入ってくるシュート!? これが全国クラスのボールか……。



 宅部やかべさんと津灯つとうも打ち取られて、この回は0点だった。



(続く)

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