432球目 ナックルとパームは同じじゃない

 この大ピンチで内野陣と俺がマウンドに集まる。



「ミスター・マイケ、ストライク入れるコンフィデンス自信がないなら替わって下さい」


「守ってるこっちのリズムが崩れるよ!」


「アウトを取りやすくしたんだって。頭脳的ピッチングや」



 眉間にしわを寄せた東代とうだい津灯つとうに詰め寄られても、真池まいけさんは全く動じない。その強心臓ぶりをピッチングに活かしてくれよ……。



「それに、俺にはまだ投げてない球種があるからさ。それで抑えてやるよ」


「フォークかいな」


「ノンノン。超魔球ナックル!」



 極めて無回転に近いため、空中で揺れるのがナックルだ。そんな魔球を素人ピッチャーの真池まいけさんが投げれんのか。



「OK。ソーそれでは、真剣にピッチングして下さい」


「YOYO、任せろよ」



 俺は不安を抱えたままレフトへ戻る。ここで満塁ホームランが飛び出したら試合が終わっちまう。



「ロックンロールナックル!」



 真池まいけさんのナックルは空中で揺れ、いや全く揺れない。ドロンと落ちるだけのゆるいパームになった。



 福口ふくぐちが引き付けて打ってきた。レフトの俺への打球だ。



「オーライ」



 俺は難なくボールを捕って、すかさずホームへ投げた。3塁ランナーがホームインして1点入った。



「サザンクロスファイアー!」



 左打者のインコースへスライダを投げても打たれてしまう。今度はセンターへ。山科やましなさんが捕ってバックホーム。



「アウト、アウト! チェンジ」



 山科やましなさんの強肩で3点目は阻止できた。次は俺からの好打順だ。



(続く)

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