431球目 投げながら歌ってる場合じゃない

 センターを見れば、外野手2人の肩に小柄な大柴おおしばが乗っている。大柴おおしばがジャンプしてボールを捕りにいく。



「アウト! チェンジ!」



 サーカスさながらの曲芸で、ホームランをアウトに変えた。データ野球じゃなくて、大道芸野球じゃねぇか。



「うおおおお! 俺のロックンロールハートが燃えてきたぁ! デヴィッド、次投げまーす!」



 真池まいけさんが千井田ちいださんに替わってピッチャーになる。彼は外野にも聴こえる歌声を出しながら投げている。



「それではお聴き下さい。ゲームセットは聞こえないパーフェクトバージョン」



「ゲームセットは聞こえない~perfect version~」

作詞・作曲・編曲:デヴィッド真池


最終回 2アウト 2ストライク 絶体絶命

どんな ボールでも 打ちたいと 思ってるけど Ah


あきらめかけたその時に

君の声が俺に届く

どんなに速いボールでも

喰らいつくあなたが好きよ


このゲーム負けたままで

終わらせたくないんだ


ゲームセットは聞こえない いくら点差がはなれても

勝利への執念が 相手を打ち負かすんだから

とめどなく流れる汗と 湧き上がってく歓声で

心が燃え上がるよ バットを振らなきゃ何も始まらない



最終回 1点差 フルベース フルカウント

どんな 形でも アウトにする 思ってるけど Ah


1人ボッチのマウンドに

君の声が俺に届く

しびれるほどのストレート

投げぬくあなたが好きよ


負けのゲームセットは

もうこりごりなんだ


ゲームセットは聞こえない いくら相手が強くとも

この一球入魂の 精神で抑えるんだから

とめどなく流れる汗と 湧き上がってく歓声で

心が燃え上がるよ ボールを投げなきゃ何も始まらない


どんなに長いゲームでも

勝者と敗者は必ず生まれ

俺は絶対に勝者になりたい

だからこそ今この一瞬に

青春のすべてをささげる


ゲームセットは聞こえない


ゲームセットは聞こえない


ゲームセットは聞こえない 2人のプライドがぶつかって

勝利の女神が どちらに微笑むか迷うから

ギラギラ光る太陽と 透き通った青空で

その先を信じたくなるよ ゲームセットになるまで

勝利の行方は 誰もわからない



「ボールフォア!」



 真池まいけさんマジメに投げてくれよ……。3連続四球で無死ノーアウト満塁フルベースの大ピンチになった。



(続く)

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