426球目 9人内野はやりたくない

 神戸ポートタウン大付属の投手陣は、ほとんどの試合を3点以内に抑えている。ここで大量失点しようものならジ・エンドだ。



 東代とうだいは外野手3人を呼んで、9人全員をマウンドに集めた。



「9人内野のシフトを敷きます。ミスター・ミズミヤはローコース低目にストレートを投げて下さい」



 スクイズ阻止のシフトにしては極端すぎるが、こうでもしないとデータ野球に勝てない。外野手3人は1塁・2塁・3塁の後ろを守り、内野手4人はいつもより数歩前に出る。



 俺はセット・ポジションについて東代とうだいのサインを見る。低目一杯のバルカンチェンジ? 何考えてんだ。俺は首を横に振る。それでも同じサインを出してくる。もう一度首を横に振る。



「ビリーブミー!」



 わかったよ。IQ156のリードを信じてやるよ。猫まっしぐらの精神で、バルカンチェンジを投げる。



 バルカンチェンジは沈んだ。栄咲えさきのバットも沈んだ。すくい上げて打ってきた。



「セ、センター!」



 千井田ちいださんが必死に無人の外野へ走る。間に合うか?



(続く)

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