425球目 俺は外野を守りたくない

 外野の守備って、あんまやることねぇな。飛んできたボールを捕るか、内野手か捕手に向かって投げるぐらい。常にやることが多いピッチャーと段違いだ。



「1番センター白木しらき君」



 白木は右打者だから、外へ逃げるカーブを打ってもライト方向の打球になるはず。俺の出番ナシだな。



 なぁんて思ってたら、いきなり打ってきた。甲高い打球音が聞こえたので、後ずさりする。



「あっ? 来ない」



 定位置よりやや前に落ちるヒットだった。音に騙されなかったらレフトフライに出来たかもしれない。クッソー。



 次の友永ともながはバントの構えをする。宅部やかべさんが低目にカーブを投げるも、難なく当ててきた。送りバント成功で1死2塁。



 3番の鮎川あゆかわは狙いすましたようにライトへ流し打つ。山科やましなさんの好返球でランナーは3塁止まりだが、まだまだピンチは続く。



 4番の福口ふくぐちにはスクイズ警戒でウエストボールを投げ、四球フォアボールになってしまう。ついに1死満塁フルベースの大ピンチだ。



「選手の交替をお知らせします。ピッチャー宅部やかべ君に替わりまして、水宮みずみや君」



 宅部やかべさんはもう降板か、早いなぁ。って、ピッチャー俺?



(続く)

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