424球目 上位3人に仕事をさせない

「1番ライト山科やましな君」



 山科やましなは女子達に手を振りながら打席に入る。今日も爽やかなイケメンスマイルだ。



山科やましな時久ときひさ、打率3割6分、OPS1.069、5回戦でサイクルヒットを記録。苦手なコースは特にナシ」



 村下監督は手を叩いてから、帽子のつばを横に変える。それを見たポートタウンナインは奇策に出る。



「うっふーん。山科やましなくぅん、私のボール打ってぇ」

「ここまで飛ばしてよー」

「イヤよ! 私が捕るんだからぁ」



 ポートタウンの選手たちが体をくねらせて、女性のような裏声で喋り出した。山科やましなは口をあんぐり開けて固まる。



「おっ、おえええ、気持ち悪ぅ」



 山科やましなの全身の力が抜けて、いつものシャープなバッティングが出来ない。ボテボテのファーストゴロに倒れた。



山科やましなはオネエに弱いか。あのデータが役立ったな」



 村下は㊙データのコピーを見てほくそ笑む。



「2番サード番馬ばんば君」



 番馬ばんばに対しては男たちの熱い声援が送られる。筋肉隆々の赤鬼化した番馬ばんばは、5本のバットを束ねて振り回す。



番馬ばんば長兵衛ちょうべえ、打率2割6分1厘、OPS.911、3回戦でランニングホームラン。三振か長打のわかりやすいバッターか」



 友永ともなが鮎川あゆかわにカーブとシンカーを低めに投げさせた。番馬ばんばは3回振るも、かすりもしなかった。三球三振だ。



「3番レフト水宮みずみや君」


水宮みずみやるい、打率3割4厘、OPS.907、相手投手のウイニングショットを打つのが上手い」



 鮎川あゆかわは3球連続でスローボールを投げる。水宮みずみやは全くタイミングが合わず、カウント1-2に追い込まれた。4球目の高目のストレートを打つも、ピッチャーフライに倒れた。



「アウト! チェンジ!」



 村下監督の思惑通り、上位3人に全く仕事をさせなかった。



(続く)

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