403球目 完全試合はエラーが許されない

 本賀ほんがさんの足は遅いので、内野安打は望めない。サードがお手玉したり、トンネルしたりしないか期待したが、鉄から普通の硬球に戻ったボールをしっかりつかんでいる。



 ファーストへ投げてゲームセット。あーあ、廃部と完全試合パーフェクトゲームのダブル屈辱を味わうなんて……。



「おわっ!」



 何と、サードの送球が高くなって、ファーストが捕れなかった。完全試合パーフェクトゲーム消滅のエラーだ。天は俺達を見放していなかった!



「サード花名はなめ君に替わりまして、面出めんで君」



 エラーした花名はなめはばつの悪そうな顔をして、ベンチにちぢこまって座る。一生チームメイトや監督から文句言われるな、かわいそうに。



宅部やかべさん、ノーヒットノーランも消してやりましょう!」


「ふん!」



 浜甲はまこう安打製造機ヒットマン宅部やかべさんが打席に入る。今日はファーストゴロ、三振、サードライナーだ。バットに当てることには期待できる。



 刈摩かるま宅部やかべさんを強打者として認めているので、ワザとカウントを3-0にする。4球目からが勝負だ。



「ストライク!」



 カーブが外角低めアウトローギリギリに決まる。コントロールはまだまだ健在だ。



 5球目はストレートが真ん中高めに入る。宅部やかべさんは打ちにいかない。



「ストライク!」



 これも絶妙なコースだ。6球目に何が来るか、宅部やかべさんは打てるのか。



 6球目はチェンジアップが低めにきた。宅部やかべさんのバットが動き出す。ゲームセットか、ヒットか、はたまたサヨナラホームランか?



(続く)

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