386球目 打つ気配がない

 刈摩かるまとの2度目の対決。相変わらず不本意だが、ど真ん中ストレートを打たせるピッチングだ。



 刈魔かるまはバットの先端でホームベースをチョンチョンと叩いてから、バットを頭上に高々とかかげ、それから頭の横にグリップがくるように構える。その一連のルーティンがやけに鼻につくぜ。



 初球からど真ん中ストレートのサイン。今回もアウトになってもらおう。



「ストライク!」



 あれれ? 何で打たないの。その後2球連続でボール球にするが、一向に打つ気配がない。



 4球目にど真ん中ストレートを投げる。



「ストライク!」



 これも不動の構えで打たなかった。やはり打つ気はないらしい。



 5球目は低めのチェンジアップ。この試合初めて、ストレート以外をストライクゾーンに投げる。



「ストライクアウト! チェンジ!」



 結局、無策の三振だった。刈摩かるまは俺を見て鼻で笑う。最後まで嫌なやっちゃ。



※※※



刈摩かるま水宮みずみやのボールはどないや?」



 尊宮たかみや監督が貧乏ゆすりをしながら尋ねる。



「大したことないですよ、監督。ボールが“おじぎ”してました」



 刈摩かるまは時代劇の悪代官のように悪い笑みを浮かべた。



(続く)

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