385球目 両チームにヒットが出ない

 良徳りょうとく学園ベンチは、刈摩かるまの好投で盛り上がっていた。



「凄いなぁ、刈摩かるま様。2試合連続ノーノーやるんと違うか」


「ノーノーどころかパーフェクトやで」



 周囲からベタ褒めされても、刈摩かるま泰然自若たいぜんじじゃくにスムージーを飲んでいる。



「あんな急造チームにヒット打たれたら恥ですよ」


「かー! さすが、刈摩かるま様は格が違う!」


「おい。君らもパーフェクトに抑えられとるぞ」



 尊宮たかみや監督は出来るだけドスの利いた声で喋る。一瞬沈黙が生まれたが、すぐに終礼前の明るさいムードに戻る。



「やだなぁ、監督。同じパーフェクトでも、内容が違いますやんか」


「そうそう! 俺らガンガン外野に飛ばしてますし」


「確かにそうだが……」



 相手投手の水宮みずみやは球が走っていない。臨港りんこう学園戦でも打ち込まれていたから、恐れるに足らずと良徳りょうとくナインは思っていた。



「アウト!」


「クッソー! またセンター捕りやがったぁ!」



 花名はなめの頭上の花がしおれる。彼は2打席連続でセンターフライに倒れた。



刈摩かるま、バットを振るなよ」


「はい」



 尊宮たかみや監督はオール外野フライでアウトを重ねるのが気持ち悪かったので、あえてバットを振らせないことにした。



(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る