367球目 チェンジアップにタイミングが合わない

 1点を追う9回裏2死満塁フルベースの場面で、番馬ばんばが打席に入る。彼はここまで4打席連続三振。ストレートに近いスライダーを投げる相見あいみなら打てる思われたが――。



「ピッチャー相見あいみ君に替わりまして、生野いきの君」



 亀羅かめら監督はバッターとの相性を考えて、再び生野いきのをマウンドに送った。



「速く投げたらアカンで。ゆっくり、ゆっくり投げていってな」


「任せとけって」



 生野いきのはここを三振で抑えて、ニュース映像で流れると美味しいと思った。鰐部わにべの100本目のホームランの方が大きく取り上げられたとしても、勝利の瞬間は確実に流れるからだ。



 番馬ばんばは全力フルスイングで生野いきののチェンジアップを打とうとする。だが、何回振っても当たらない。わずか2球で追い込まれてしまった。



「あと1球、あと1球!」



 臨港りんこう学園の応援団の声が、番馬ばんばへの応援より大きくなる。番馬ばんばは打席を外して、鬼スイングを繰り返す。



番馬ばんばくーん」



 飯卯いいぼう監督が番馬ばんばに声をかける。彼女は“セーフティーバント”のサインを出した。



(続く)

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