364球目 ピッチャーの肩は簡単に回復しない

※今回は臨港りんこう学園の生野いきの係斗けいと視点です



 2死1・3塁になって、伝令がやって来た。ここでピッチャー交代か……。



生野いきの、完投直前で悪いけど、ライトでゆっくり休め。もう130球も投げとるからのう。By亀羅かめら監督」



 俺はベンチの監督を凝視する。監督は大あくびして、まぶたをこすっている。おじいちゃんもお疲れのようだ。



「ここまでよう投げたわ、生野いきの。お疲れさん」


「ハハハ。4回のホームラン、カッコ良かったなぁ」


「ライトフライ捕り損ねんやな、名投手」


「ナイスピッチング!」


「また鳥になってね」



 こんなに十九じゅうくと内野陣に褒められたんは、新チーム結成以来初めてかもしれん。俺は口笛を吹いて、ライトへ走る。



 俺に替わってマウンド上がるんは相見あいみ。左のスリークォーターで3種類のスライダーを操る技巧派だ。今日もスライダー決まっとるな。



 浜甲はまこう津灯つとうは1-2から外のスライダーを引っかけた。サードへのゴロ、ゲームセットや。



 と思ったら、鰐部わにべが3塁走者をチラ見して、送球が遅くなってまう。内野安打になってもた。



 2死で3点差やから、3塁走者はどうでもええねん! その前に、俺がピッチャーやったら、鰐部わにべの方へ打たせてへんし。



 クッソー。やっぱ監督の命令無視して、マウンドに居座るべきやったか?



(続く)

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