359球目 ワニの手足は長くない

 柳生やぎゅう理事長夫人と園田そのだは、理事長室のテレビで浜甲はまこう学園VS臨港りんこう学園を観戦していた。



<ここまで鰐部わにべ君は3打数1安打。前の試合まで6割以上打っていたのを考えれば、浜甲はまこうバッテリーは健闘していると言えるでしょう>


<ええ。しかし、鰐部わにべ君はあと1回、獣化のチャンスがあります。水宮みずみや君のボールにタイミングが合ってきていますから、まだわかりませんよ>



 TVの実況と解説は中立的に話すが、理事長夫人はアンチ浜甲はまこう野球部を貫く。



「フン! どう浜甲はまこうバッテリーがあがこうが、パワーアップした鰐部わにべ君がホームラン打って、臨港りんこう学園が勝つのよ」


「ちゃんとドーピングプロテイン飲んでくれますかねぇ」


「絶対に飲む! 彼を信じてるわ」



 鰐部わにべは特製プロテインを紙コップに入れ、水で少し溶かしてから一気飲みする。



 彼がワニ化すれば、いつもより両腕と両足が短くなり、腹が防弾チョッキを付けているかのように膨れ上がった。実際のワニに近い長身短足のむっちり体型だ。



 彼は大口を開けて笑いながら打席に入る。



「ヒャッハハハハハハ! 100ホーマー、ホンマに決めたる!」



(続く)

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