357球目 休む間もない

 じわじわと点差を縮めてくる臨港りんこう学園打線は、実にいやらしい。しかも粘ってくるし。俺は6回までで100球以上投げさせられた。



「はい、バナナ」



 ベンチに戻った俺に、グル監がバナナを差し出す。バナナを食べながら、仲間のバッティングを見守る。



 烏丸からすまさんがレフトフライに倒れた後、火星ひぼし四球フォアボールで出る。東代とうだいがキッチリ送りバントを決め、宅部やかべさんへ回る。



 俺はスポーツドリンクを飲んで、汗をぬぐう。段々と暑くなってきたな。嫌んなる。



 宅部やかべさんの打球が快音を残し、三遊間を抜け、ない。鰐部わにべが追い付いて、ファーストへ送球。また0点だ。



 リードしてる時と同点の時では、テンションが大分違う。俺はタメ息を吐いてマウンドへ向かった。



 長打が出ないよう、丁寧丁寧丁寧に低めに投げたつもりが、高目に入ってしまう。



「おりゃあ!」



 緑川みどりかわの打球がレフトスタンド一直線――。



「アウト!」



 番馬ばんばさんの長い手が活きた。サードライナーだ。



 次の夜鹿よじかもセカンドへ痛烈な打球。



「アウト!」



 宅部やかべさんのジャンプ力でアウトになった。2球でツーアウト、いいぞいいぞ。



「4番サード鰐部わにべ君」



 プロ注目の打者と4回目の対決だ。



(続く)

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