354球目 ワニをとまどわせない

 鰐部わにべは2回目の獣化を使って、打席に入る。笑顔は取り戻したものの、相変わらず水宮みずみやのボールに翻弄ほんろうされる。ストレートを空振り、チェンジアップを見逃した。



「ふーむ。ワシの毎回ローン返済作戦に気づいたようじゃけぇ」



 亀羅かめら監督は首をひねって、鰐部わにべの猛打が復活する方法を考えていた。



「ヒット狙い、ホームラン狙い、むむ、そうか! ターイム!」



 監督は鰐部わにべをベンチへ呼ぶ。



鰐部わにべ、ヒット狙いはもうええ。三振かホームランでいけ」


「えっ? でも、1点ずつ取らんと浜甲はまこうが……」


「ええか? 今日負けたら、お前の高校通算100ホーマーの夢がのうなる。しょぼいヒットで高校生活終わってもええんか?」



 鰐部わにべはワニ歯をガタガタ鳴らし、激しく首を横に振る。



「嫌です! ホームラン打ちたい、打たせて下さい!」


「そうじゃ。一発かませぇ!」



 ヒット狙いで縮こまった鰐部わにべのバッティングは一変し、ホームラン狙いの強振になった。



 外のストレートを強引に打つ。少し振り遅れるも、一二塁間を抜け、ライト前ヒットになった。



(続く)

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