353球目 バットが勝手に伸び縮みしない

 浜甲はまこう打線の追加点は望めない。ならば、この2点リードを守り切るだけだ。



 5回表の投球前、東代とうだいがマウンドに駆け寄ってくる。



「リンコーはエブリィイニング毎回、1点をゲットしにきています。ツーアウトまではホームラン、ツーアウト後はヒット狙いのバッティングです」


「1点ずつ取りにくるなんて、強豪校らしくないねぇ」


「ソー、ツーアウトまではボールゾーン、ツーアウト後はハード難しいゾーンにピッチングして下さい。アーユーOK?」


「イエス、イエス!」



 振り回してくるバッターに対しては、低目のボールゾーンに落ちるチェンジアップ、ストライクゾーンより高目のストレートを投げた。



 はた緑川みどりかわと連続で三振に仕留めてツーアウト。



「3番レフト夜鹿よじか君」



 ヒット狙いのバッターに対しては、ストライクゾーン四隅にボールを散らす。あっという間にカウント1-2.次で決める。



 4球目は内に食い込むスライダー。夜鹿よじかは打ちにきたが、窮屈きゅうくつなバッティングになる。



「ファール!」



 あれ? 何か急にバットが縮んだような。気のせいかな。



 5球目はボール、6球目はファールになって、7球目。今度はストライクからボールになるチェンジアップだ。



 チェンジアップはバットの下へ落ちていく。これで三振と思いきや、バットが丸太のように太くなって、ボールに当たる。



「ファール!」



 ファール後はバットが通常サイズに戻っていた。間違いない。夜鹿よじかの超能力は、瞬時にバットのサイズを自由自在に変えられるものだ。



 結局、13球も粘られて、四球にしちまった……。



(続く)

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