345球目 ブルーバードは遠くにいない

 ベンチから戻ってきた生野いきのは、筋肉モリモリの青い鳥獣人になっていた。首筋から胸元はオレンジ色で、ユニフォームにシックスパッドがくっきり浮き出ている。



「イソヒヨドリか。渋い鳥になったもんや」


烏丸からすまさん、そのイソ何とかって、どんな鳥ですか?」


「イソヒヨドリは元々海岸におったけど、最近は都会に進出しとるよ。ヨーロッパでは高い山におるから、色んな環境に対応できるマルチバードって感じ」



 色んな投げ方が出来る生野いきのにピッタリの鳥ってワケか。



「フンフンフーン」



 生野いきのは大きく振りかぶり、胸筋が目立つよう反り返って、左足を天高く上げて、投げてきた。



「ストライクッ!」



 ど真ん中にストレートが来た。球場の球速表示は148、速い……。



「オーウ。点をプラスするのがハードですね……」



 生野いきのは上から投げることで球が速くなったが、コントロールは悪くなった。ストライクとボールを繰り返す。



 カウント2-2からの5球目。津灯つとうはいつもより早めにバットを振るが――。



「ストライクッ! チェンジ!」



 ゆるゆるのチェンジアップを投げてきた。彼女にしては珍しい三振だ。



「リードを守りますよ、ミスター・ミズミヤ」


「OK。好リード頼むぜ、東代とうだい



 初回に大量点を取られること(1回戦・2回戦)はあったが、こっちが取ったのは初めてだ。



 この5点リードを守り切るぞ!



(続く)

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