344球目 ドーピングコンソメパンチはコンビニで売ってない

※今回は臨港りんこう学園の生野いきの係斗けいと視点です



 この俺が1イニングに6点も取られるなんて……、夢や! 夢に違いない!



 伝令の源野げんのがマウンドにやって来た。内野手が全員集合している。ベンチ前では相見あいみが投球練習をしている。これ、降板の流れやないかい!



鰐部わにべ、このほっぺつねってみて」


「ハハッ。こう?」



 鰐部わにべが俺の右頬をちぎれんばかりにつねってきた。痛い、痛い、殺す気か?



「いだだだだ、やめろ!」


「ごめん、ごめん」


「何やっとんねん、2人とも。ほな、監督からの伝言。生野いきのはライト守って、ピッチャーは相見あいみでよろしく」



 源野げんの不愛想ぶあいそうな顔で伝えてくる。



「断る! 俺はまだまだ投げれる」


「ハァ? なんやかんや6点取られたんは、どこのどいつや!」


「気づけばいつかコールド負けしとるで」



 井藤いふじ緑川みどりかわに文句言われても、マウンドを他人に明け渡したくない。ここでマウンド降りたら、俺の高校野球が真っ黒で終わってまうから。



「やっぱ、そう言う思たわ。監督からの伝言、追記。もし続投したいなら、上から投げろって」


「上から、オーバースローか?」



 野球始めたてに投げてたけど、最近は全く投げてない。ちゃんと投げれるやろか。



「そうだ!」



 俺は急いでベンチへ戻り、ポテチの袋を開けてドーピングコンソメパンチを食べまくる。これでマッチョ獣人になれる!



 本当は準決か決勝で使いたかったけど、今日負けたら何の意味もない。



 うおおおおおお、段々と筋肉が盛り上がってきたぁ! 青い羽毛が全身に……、羽毛??



(続く)

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