342球目 監督に逆らわない

※今回は臨港りんこう学園の生野いきの係斗けいと視点です



「1年坊主か……、クソッ!」



 今年の兵庫の夏大なつたいは俺が大活躍して、プロ大注目の選手になるつもりだった。



 それなのに、チームメイトの鰐部わにべがアホみたいに打ち、全く目立たへん。さらに、浜甲はまこう水宮みずみやが1試合で18個も三振奪って、新聞に大きく載りやがった。



 俺、ここまで20イニング投げて2失点やぞ! あっ……、さっき点取られてもうたか……。



 超強力打線に支えられた平凡な投手のレッテル貼られる前に、ここは何としても抑える。俺の三種の神器じんぎ投法は長年の努力のアレやからな。



 野球始めた時はオーバースローやったけど、小4の時にストライク入らんくなって、監督からスリークォーターに変えさせられて。そしたらストライクがバンバン入った。



 中学入ると、先輩や同級生が右のスリークォーターだらけで、俺が1番ボール遅かったから、監督からアンダースローで投げろ言われて。そしたら打たせて取る名投手になって、地区内で無敵やった。



 臨港りんこう学園入ったら、亀羅かめら監督にサイドから投げればええじゃろ言われて、サイドスローに転向。コントロール抜群の好投手になれた。



 去年のセンバツまでサイドスローやったけど……、ボコ打たれしてもて。そんで、スリークォーター、サイドスロー。アンダースローを投げ分ける練習を重ねた。



 経験の差を見せつけたる! まずはスリークォーターのストレート!



「ストライクッ!」



 次はサイドスローのスライダー。



「ストライクッ!!」



 3球目はアンダースローのチェンジアップで決めたる。しかし、サインはスリークォーターのチェンジアップだ。首を横に振る。



(続く)

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