341球目 プロ注目のピッチャーでも怖くない

 生野いきの対策をしっかりやったおかげで、宅部やかべさんがいきなり打てた。



 真池まいけさんはロックバンドのようにシャウトしながら、バントの構えをする。ちっとも気後きおくれしていないから、大丈夫。



 と思いきや、サードの鰐部わにべ真正面の打球になってしまう。いかん、宅部やかべさんがアウトになっちゃう。



「ハハハッ!」



 鰐部わにべは大笑いしながら、3塁に入ったショートへ投げる。だが、その送球がとんでもなく高くなった。真部まべは立ち幅跳びの選手みたくジャンプして捕った。よく見たら、ウサギの耳が生えている。



「セーフ!」



 1死1塁になるはずが、鰐部わにべ野選フィルダースチョイスで、無死1・3塁だ。浜甲はまこうに流れが来てる。



「クソ鰐部わにべがぁ!」



 マウンド上の生野いきのがロージンバックを蹴っ飛ばす。イライラして投げると、ボールが甘くなりますよ。



 津灯つとうは高目のストレートをセンターへ運ぶ。宅部やかべさんは楽々ホームインする。同点だ。



「今日もホームラン打つかー」



 山科やましなさんが顔を輝かせながら打席に入る。サイクルヒットマンに対して、球場全体が歓喜の渦に包まれる。



「打て打て山科やましなぁ!」


山科やましなくぅーん、こっちまで打ってぇーん」


「俺より目立つなぁ!」



 生野いきのがサイドスローで投げる。あまりに力んでしまい、山科やましなさんの背中にボールが当たってしまった。



「デッドボール!」



 無死ノーアウト満塁フルベースの大チャンスで、俺に打席が回ってきたぁ!!



(続く)

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