334球目 敵味方の区別はない

 準々決勝が明日に迫ってしまった。



 昨日は、番馬ばんばさんが破壊したピッチャー太郎DXの修理に追われ、生野いきの対策が十分にできなかった。今日はたくさん打ち込むぞ。



「ピッチングロボに慣れても、結局は生身の人間に投げてもらわんとアカンかも」



 津灯つとうが素振りしながらつぶやく。部員がたくさんいる強豪校なら、そういう練習できるけどなぁ。



浜甲はまこうのみんな、お・ま・た・せ❤」



 甘ったるい声が聞こえてきた。何と、六甲山ろっこうさん牧場の豊武とよたけ戸神とがみの馬牛バッテリーがやって来たのだ。



「俺のボール、打ちたいんやろ? イヤんなるほど打たせたるわ」



 豊武とよたけは自信たっぷりに鼻息荒くしゃべる。



「豊ちゃんのドS~❤」



 戸神とがみは顔を赤らめて、豊武とよたけの肩に寄りかかる。この2人、バッテリーを通り越してカップルなのでは……?



「2人とも来てくれたんか。サンキュー」



 大縞おおしまさんが2人に感謝している。俺達は大縞おおしまさんと馬牛バッテリーに感謝カンゲキ雨嵐だ。



※※※



 豊武とよたけのボールを打ち続けていたところ、また新たな訪問者がやって来た。



浜甲はまこうのために、バッティングピッチャーをしてみましょう!」


「ハァハァ。浜甲はまこう、駅から遠すぎやろ」



 八木やぎ学園の木津きづ満賀まんが黒炭くろずみだ。スリークォーターの木津きづとサイドスローの黒炭くろずみなら、生野いくの対策になる。でも、どうしてここに?



「アニヲタ仲間の安仁目あにめ君に頼まれてもてなぁ。あと、浜甲はまこうが甲子園に出たら、雑誌の出場校紹介の地方成績に、八木やぎ学園の名前載るし」


「あっ、龍水りゅうすい監督も同じようなこと言ってました。満賀まんが校を全国に知らしめるために、協力せぇと」



 ベスト8進出となれば、甲子園出場が見えてくる。負けた各校の思いは同じってか。



「ポポポポポポー。お久しぶり」



 周囲をひんやりさせる摩耶まや尺村しゃくむらまで来てしまった。



(続く)

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