321球目 浮遊霊が寄り憑かない

 烏丸からすま東代とうだいから、瀧口たきぐちが右打者に対して外中心のコースで攻めることを聞いていた。サードが宮田みやた水宮みずみや)から糸森いともりに替わっても、その傾向は変わらないらしい。



 しかし、コントロールが悪いと、狙いのアウトコースに来ないかもしれない。そこで、烏丸からすまは近くの浮遊霊を払って、奥良の右肩を“除霊じょれい”したフリをする。肩の不安がなければ、思いっきり腕を振って、外のナイスボールがくるからだ。



 烏丸からすまのバットが外角低めアウトローのボールをとらえる。カットボールが横に逃げようとしたが、彼の長いバットから逃げられない。真芯に当たってジャストミートだ。



 打球はセンターの前に落ちた。3塁ランナーの山科やましなは生還。2塁ランナーの番馬ばんば鬼突猛進きとつもうしんで3塁を回る。



「ショート、カット!」



 ショートの片和田かたわだがセンターからの送球を捕り、ホームへ投げる。送球はバックネットから見て右にそれるも、瀧口たきぐちはボールをしっかりつかみ、番馬ばんばの突進に備える。



「ぬおおおおおおおおおおおおおお!!」


「クソがああああああああああああ!!」



 本塁ホームベース上で2人の男がぶつかった。同点かスリーアウトチェンジか。



(続く)

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