318球目 めんごめんごは許されない

 東代とうだいは俺の暗号に気づいてくれたみたいだ。ニセ宮が縛られているからな。



 これで、心おきなく試合に集中できるぜ。今の俺がやるべきことは、打球が来たらエラーすること。これに尽きる。



 1死1・3塁で、バッター火星ひぼし。グル監がスクイズのサインを出している。



「ファースト・サード前進!」



 俺は言われたとおり、3塁より前を守る。瀧口たきぐちは俺を信用していないから、左の火星ひぼしに対してインコースを攻めるだろう。



 宮田みやたが俺とわかっているから、浜甲はまこうベンチはどこを攻めるか丸わかりだ。確実に点が入るぞ。



 糸森いともり火星ひぼしふところにスライダーを投げる。火星ひぼしは瞬時に腰を引いて、俺の方にバントしてくれた。



「サ、サード!」



 俺はボールを捕って、キャッチャーに投げると見せかけて、ファーストへツーバウンド送球。3塁ランナーの番馬ばんばさんは生還し、火星ひぼしは楽々セーフだ。



「ごめんごめんご!」



 俺は舌を出して瀧口たきぐちに謝る。奴は肩を震わせ、浜甲はまこうベンチを見る。亀甲きっこう縛りの水宮みずみや宮田みやた)と目があい、顔が真っ青になった。



 さぁさぁ、オレを交代させないかぎり、どんどん足を引っ張るぜー。



(続く)

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