316球目 IQ156は伊達じゃない

 6回表の守りが終わると、東代とうだいはさっきの宮田みやたの言動を振り返る。こうのとり高校の選手は語尾に「~やし」がつく。しかし、先ほどの宮田みやたの語尾はコロコロ変わっていた。何か意味があるのだろうか。



 彼はベンチの中で、宮田みたやのセリフの語尾を順番に思い出す。



 打つわ、入った、打つやし、こんわ、打てる、悔しい。



 わ、た、し、わ、る、い。



 私は塁。



 アイアムルイ!



「ルイ・ミズミヤ!」



 宮田みやた水宮みずみやとはどういうことか。水宮みずみや本人は4回から別人のように、ヒットを打たれ、四球フォアボールを出しまくっている。まるで、ワザと負けたいかのように。



「アカン、力んじゃったな」



 水宮みずみやがあっさり三振に倒れて帰ってきた。3回裏に続き、2打席連続三振だ。



「サードイニング、サード、ハッ!」



 東代とうだいは、3回表に宮田みやた水宮みずみやがぶつかったことを思い出す。あの時、精神が入れ替わっていたとしたら?



 その仮説を証明するため、彼は対策ノートをめくり、兵庫連合の過去の成績を見る。



 VS三田さんだ青雲せいうんかん 4回・5回で12点を挙げる。青雲せいうんかんのキャッチャーのミスが目立つ。



 VS伊丹いたみ三 4回裏に6点、9回裏に5点を挙げる。伊丹いたみ三エースの乱調が目立つ。



VS大寺おおでら 4番の細竹ほそたけが2打席目以降ノーヒット。



 いずれの試合も、4回以降に兵庫連合有利の展開になっている。9番の宮田みやたに打席が回るのは3回ぐらい。これは、彼女が敵チームの選手と入れ替わった証拠になり得る。



 ただ、あと1つ、決定的な証拠がない。そこで、東代とうだい水宮みずみやを試す。



「ミスター・ミズミヤ、このドリンク、下さい」



 水宮みずみやは「OK」と言って、東代とうだいが渡したスポーツドリンクを、クーラーボックス内に



(続く)

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