※今回は兵庫連合の宮田（みやた）洋子（ひろこ）視点です。

　5回にもっと点が入るはずやったのに、浜甲（はまこう）外野三球士によって1点も入らんかった。こうなりゃ、私がワザとアウトなって点が入らんようにするだけやし。

　先頭打者の宅部（やかべ）がセカンドゴロ、真池（まいけ）が三振で、あっと言うまにツーアウト。これやったら私の出番ナシか。あかん、津灯（つとう）がヒットで出よった。

　監督からのサインは1球待て。あまりサインを無視したら怪しまれるから、ここは素直にしたがおか。

　糸森（いともり）さんの左足が上がると同時に津灯（つとう）が走った。瀧口（たきぐち）君の強肩でも間に合わへん。陸上選手並みにスタートダッシュええし。

　次はヒットエンドランのサインが出た。ここは見逃したフリしたろ。

　糸森（いともり）さんの左のつま先がホームに向いてから、津灯（つとう）は3塁へ走り出す。ヒットエンドランのサインと牽制を恐れてか、スタートが遅い。これなら楽々アウトに出来る。

　私は金縛りに遭ったようにボールを見送る。瀧口（たきぐち）君は素早く3塁へ送球した。

「アウト！」

　さすがの水宮（みずみや）君も、瀧口（たきぐち）君の正確無比なコントロールの送球を、ワザとそらしたり、こぼしたり出来んかったみたいやし。

　これで5回裏は0点。4-2、兵庫連合のリードやし。

（続く）

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい