311球目 俺の体をもてあそぶんじゃない

 ニセ宮のピッチングは、頭を抱えたくなる悲惨な内容だった。



 上位打線に三連続ヒットを打たれると、下位打線には四連続四死球を与えて、4点も取られてしまった。



「9番サード宮田みやた君」



 ううう、バットがめちゃくそ重い。この女、握力なさすぎんだろ。そりゃ、ヘッドの下がった力のないバッティングになるよ。



 ここで俺が三振してもツーアウト。再びワザと打たれたり、四球を出したりすれば、取り返しのつかない点差になってしまう。何とかしてゲッツーになって、4回表を終わらせるんだ!



 浜甲はまこうの内野陣で1番守備が上手いのは津灯つとう。センター返しで彼女に捕らせよう。



 俺は元の体と同様に左打席に立つ。この女の視力は悪くないから、バットに当てることは出来るだろう。



 ニセ宮はバッピーのような甘いボールを投げてきた。打つべし!



 バットを振りぬけば、いやああああ、両手がめっさしびれるぅ!!



 打球は津灯つとうへのライナーになった。彼女がサーカス芸人の軽やかなジャンプでボールをもぎ捕った。そのままヒーロー着地を決め、セカンドの宅部やかべさんへトス。



「アウト! スリーアウトチェンジ!」



 やっぱり、浜甲はまこうの二遊間は鉄壁だな。普段、どれだけ俺が助けられてるかわかったよ。



(続く)

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