310球目 水宮君の体を手放したくない

※今回は兵庫連合の宮田みやた洋子ひろこ視点です


 水宮みずみや君の体は予想以上に私好みの体やし。大寺おおでらの4番は腹が出て臭かったけど、水宮みずみや君は程よく筋肉がついていて、とても動きやすい。



 この体で全力投球したら、相手チームを完全に抑えられるワケやし。でも、ごめんね。兵庫連合に勝たせるために手抜きするから。



東代とうだい君、サイン忘れても、しまった。教えてほしい」


「OK。ストレートはロックグー、スライダーはシザーチョキ、チェンジアップはペーパパーー、バルカンチェンジはスリーフィンガーです」



 バルカンチェンジって、何か世界史で出てきそうな言葉やし。握りわからないから、わしづかみで投げたろか。



「1番ファースト朽神くちかみ君」



 朽神くちかみさんはインコースに強いから、ストレートをインコースに投げてあげよう。セット・ポジションから甘い甘いストレートを、どうぞ❤



 先輩の鋭い打球がレフトに抜け、ない。サードの番馬ばんばが伸ばしたグローブに入った。



「アウト!」



 うちのサードなら、絶対ヒットになるのにぃ。自分のことやけど。



「2番ショート片和田かたわだ君」



 片和田かたわださんは低めのボールにめっぽう強い。だから、真ん中低目へのスライダーを投げてあげる。



 先輩のダウンスイングがボールをとらえる。私の横を抜けてセンター前ヒット。さすがやしー。



「3番ピッチャー糸森いともり君」



 糸森いともりさんはじっくり見るバッターやから、3球目に甘いボールを投げよう。ど真ん中のストレートをドーン!



 先輩が強引に引っ張って、レフト線のツーベースヒットになった。あっさり同点。



水宮みずみや君、しっかりー」



 ショートの津灯つとうの声かけに、左手を挙げて応える。しっかり投げないけども。



「4番セカンド夢野ゆめの君」


「ヒットを打つ!」



 片和田かたわださんとヒットの本数バトルしとるから、ちょっと力んどるかな。



 インコースにストレートを投げれば打ってくれた。詰まった打球に、ライトの火星が追い付こうとする。



「フェア!」



 やった、これで逆転だ!!



(続く)

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