5回裏 俺の名は。 VSスパークルなハートスワップの兵庫連合

299球目 寄せ集めでも弱くない

 兵庫連合は、人数が少ない野球部3つが集まったチームである。こうのとり高校、須磨すま海浜かいひんと、尼崎あまがさき双葉そうようの3校で形成されている。



 こういう連合チームの場合、試合に勝った時に流される校歌は、どこか1つの高校と決まっている。初戦は尼崎あまがさき双葉そうよう、2戦目は須磨すま海浜かいひんの校歌が流れた。



「今日は何としても、私らの校歌流すやし!」



 サードの宮田みやた洋子ひろこは、こうのとり校の仲間に呼びかける。



「まだ勝つ気なん? もうええんやけど」



 エースの糸森いともり須磨すま海浜かいひん)はあきれ顔で言う。



「ベスト16なったら、新聞にデカデカと載るかもしれんやし。糸森いともり先輩は目立ちたくないん?」


「なるほど、そっか! 好投してモテ期つかんだる!!」


「あたしがおるのに、この浮気野郎!」



 奥良おくら糸森いともりの耳を引っ張る。彼は顔をゆがめながら叫ぶ。



「ちょ、ちょ、待てや! いつから、お前は俺の彼氏になったんや?」


「幼稚園の頃、結婚してくれる言うたやんかー」


「アホ―! あれはおままごとのセリフやー!」



 夫婦めおと漫才に沸く兵庫連合ベンチ。ただ、尼崎あまがさき双葉そうようの選手は全くそれを見ていない。屈強な体の2人は、素振りをしながら快活に話している。



「おい夢野ゆめの―。今日もどっちがヒット多く打つか賭けようぜー」


「ええぞ、片和田かたわだ。負けた方が勝った方にお好み焼きおごるってことで」



 全く緊張の色を見せず、ふざけまくる兵庫連合ベンチ。その様子を見て、1人怒る者がいた。大寺おおでらの4番打者の細竹ほそたけ守男もりおである。彼は拳を固め、坊主頭から湯気を出していた。



「ゆっ、許せん! 俺のバットで奴らを倒す!」



(続く)

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