298球目 人を呪わば人間性を保てない
「失礼しまーす。あれ?」
理事長夫人の姿が見当たらない。ふと床に視線を落とせば、平べったい茶色の魚がピチピチ動いていた。
「
急に魚が人語を発したので、彼は腰を抜かす。
「うわぁ! カレイがしゃべったあああああ!」
「ヒラメよ! 呪いが失敗して、この姿になってしまったのよ。早く入れなさい!!」
「あっ、理事長夫人ですか? はい、入れます」
彼は布でヒラメ理事長夫人を包み、そっと水槽の中へ入れる。ヒラメはゆっくりと水槽の底へ沈んでいった。
「呪いが失敗すると、こんな姿になるんですね……。くわばらくわばら」
「それで、
ヒラメ理事長夫人が、彼の脳内に直接語りかたりかけてくる。
「はっ、はい。明日の兵庫連合と
「どっちも弱そうな高校ね。
「えっ? 私がやるんですか?」
呪いが失敗して魚になることを考えれば、絶対にやりたくない。しかし、ラグビー部監督を
「わかりました! 一生懸命、呪いをかけてみせましょう」
(5回表終了)
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