296球目 巨大な頭を支えきれない

「8番キャッチャー人面ひとつら君に替わりまして、ピンチヒッター才頭さいとう君」



 アナウンスの声が終わると、尺村しゃくむらがタイムを取ってベンチへ戻る。彼女がパワーヒッターの魂を元の体に戻すのだろう。俺たち外野陣は、フェンス手前まで下がる。



 ベンチから出てきたのは、ぶっとい腕の選手だ。彼がバットを振れば、頭がおばけカボチャ大のサイズに変わる。頭が肥大化する超能力者か!?



 よくよく目をこらせば、巨大な頭を支えるために、両腕が相撲力士級に太い。歩くたびに地面が振動する。



「さぁ来い!!」



 才頭さいとうのバットの先端がライトスタンドを差す。ホームラン予告か?



才頭さいとう打て―!」


「ホームランだぁ!」



 突如として、摩耶まやの応援団が声を荒げる。



 四球で歩かす手もあるが、強気の夕川ゆうかわさんが納得しないだろう。彼は大きく振りかぶり、自信満々のストレートを内角低めインローに投げる。



「ホボァ!!」



 才頭さいとうのバットが火を噴いた。打球はライト一直線。さっきの尺村しゃくむらと同じ打球だ。俺は瞬時にセンター方向に走って、グローブを出す。やった、ボールがグローブに飛び込んだ! だが、ボールの勢いが強すぎて、グローブが弾かれた。ボールは無人の右中間を転々と……。



(続く)

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