293球目 試合は最後まで見逃せない

 浜甲はまこう学園は7回に3点を入れると、8回・9回にも1点ずつ入れて5-3になった。水宮みずみやのピッチングは絶好調で、18奪三振だつさんしんを記録した。



 一塁側スタンドの龍水りゅうすい黒炭くろずみは拍手して好投を称える。



「今日の水宮みずみやと対決したかったわぁー」


「来年、僕が打ちますよ!」



 黒炭くろずみは胸を張って力強く答える。



「それは頼もしいな。試合はほぼ決まったから、そろそろ帰ろか」


「まだ帰らない方がいいで御座候ござそうろう



 赤穂あこう大志たいし大石おおいしが、立ち上がった龍水りゅうすいの袖をつかむ。



摩耶まやは4回と9回に点を入れてきたで御座候ござそうろう


「だが、今日の水宮みずみやから点を取るのは――」


「ピッチャー水宮みずみや君に替わりまして、取塚とりつか君」



 4回途中と同じく、ライトの取塚とりつかとピッチャーの水宮みずみやのポジションが入れ替わった。



「最後まで投げさせたらええのにー」


水宮みずみやが肩を回して首を傾げとる。またアクシデントかもな」


「最後まで刮目かつもくせよで御座候ござそうろう



 最終回、摩耶まやの打順は、本日のキープレーヤー・尺村しゃくむらから始まる。尺村しゃくむらは別のチームメイトの魂を吸って、バットを長く持って素振りを繰り返していた。



(続く)

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