291球目 カラスが鳴いても不幸は起きない

※今回で、浜甲ノーヒット選手クイズの答えを出します。



 烏丸からすまさんのアホ―! 尺村しゃくむらの方を向いて打つから、ファーストゴロじゃないかぁ! とりあえず、俺は三塁へ走るが、ゲッツーでチェンジかもしれない。



「ゴーゴーゴー!」



 津灯つとうが思いっきり腕を振る。あれ、ホームへ走っていいのか? ファースト方向を見れば、尺村しゃくむらが死んだようにうつぶせになっている。何があったかわからんが、走ったれ。



 俺は楽々ホームイン。ライトの置堀おきぼりの送球が逸れて、火星ひぼしかえってこれた。今までの苦戦が嘘のように、あっさり同点に追いついた。



「一体何が起こったんだよ」



 俺はベンチへ戻るやいなや疑問をぶつける。



烏丸からすまさんの折れたバットが尺村しゃくむらのデコに当たってもうたやん」


「えっ? でも、ボールより後にバットが当たるって、おかしくないですか」


烏丸からすま君が折れたバットの破片を蹴ってしまい、不幸にも彼女に当たっちゃったんや」



 何てラッキーな烏丸さんだ。いや、ワザと蹴った可能性が無きにしもあらずか。



 二塁上で烏丸からすまさんが翼をバタバタさせて、甲高い声で叫ぶ。



津灯つとうちゃん、打ったで! ナイスバッティング―! カーカー!!」



 そう言えば、カラスって、西洋では不吉の象徴だっけか。不吉度では、尺村よりカラスの方が上手ってか。



 取塚とりつかさんがバントで烏丸からすまさんを送り、2死3塁になった。



 ここで打席に立つは公式戦ノーヒットの東代とうだいだ。



「代打出さないんですか?」



 グル監は首を横に振る。



水宮みずみや君、今日は東代とうだい君のリードで絶好調でしょう? 本賀ほんがさんやったら打つかもしれんけど、キャッチャーが火星ひぼし君になったら、調子狂って点取られるかもよ」


「あー、そうですね」



 今日は6回まで投げ、1本しかヒットを打たれず、13個も三振を奪っている。こんな調子のいい日は人生初かもしれない。



東代とうだい、打てよー」



 俺はIQ15東代6のバットに祈りを込める。



(続く)

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