290球目 幼なじみとは会話が尽きない

「久しぶりやなぁ、っちゃん」


 烏丸からすま尺村しゃくむらに声をかける。尺村しゃくむらは前髪を上げて、彼の顔を確かめ、目を丸くして叫ぶ。



「あっ、天飛てんと! 久しぶりー」


「みんなと仲良うやっとるか?」


「もちろん! ねぇ、みんな?」



 彼女がチームメイトに問いかければ、全員が黙ってうなずいた。



「八っちゃんには悪いが、俺っちのチームは甲子園行かんと廃部になるんや。せやから、負けてもらうで」


「へぇー。こっちは甲子園行ったら、校舎がキレイなるから、頑張ってるんだポッポー!」


「何や、その語尾は? お前、そんなキャラ違うやったろカー!」


「皆から八尺はっしゃく様のモノマネしろ言われてやっとったら、いつの間にかクセになったポポポポポポ! そっちこそ、昔はカーカー言わんかったやろ」


「俺っちもカラスのモノマネしろ言われたから、こうなったアオアオアオ!」


「ゴホン。君達、試合中の私語は慎みなさい」

 


 球審に注意されて、2人は口を閉じる。



 猫屋敷ねこやしきは右バッターの烏丸に対して、外にストレートを投げる。



「ぜっこーきゅー!」



 烏丸からすまが長い竹バットで外のボールをとらえる。だが、竹バットが経年劣化で折れてしまう。打球はファーストへのゴロになる。



「私達の勝ち―」



 尺村しゃくむらが口元に笑みをたたえて、打球に突進する。



(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る