285球目 右肩の痛みがない

 長年の習慣で、5回裏のマウンドに登ってしまった。取塚とりつかさんが心配そうに俺を見つめる。



「えっ? 水宮みずみや君、もう大丈夫なん?」


「あっ、すみません。いつものクセで」



 俺はブルンブルンと右腕を回した。あれ? 全然痛くない。いつの間にか、肩の痛みが引いていた。



「あっ。もう大丈夫ですね、肩」


「わかった。監督に伝えに行くわ」



 取塚とりつかさんがベンチへ戻っていく。再び、このマウンドに立てて良かった。



「ピッチャー取塚とりつか君に代わりまして、水宮みずみや君」



 よっしゃ! 何で4回だけ肩が痛くなったかわからないが、投げられるからには、どんどんアウトにしていくぜ。



 さっきより球速やキレが増し、大岩おおいわの打席では自己最速の139キロを計測した。



 摩耶まや打線を三者凡退に抑えて、胸を張ってベンチへ戻る。



「ミスター・ミズミヤ、ナイスピッチング!」



 東代とうだいがにこやかに拍手してくれる。



「サンキュー! もう摩耶まやには点をやらんぞ」


「アンド、グッドニュースがあります。シャクムラの超能力がわかりました」


「マジか? どんな能力だ?」


「教えて、教えて!」



 この回の先頭打者の千井田ちいださん以外が、東代とうだいを興味津々に見つめる。東代とうだいはせき払いしてから答える。



「シャクムラの超能力、それは、アナザー他者アビリティ特性をコピーすることです!」



(続く)

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