ゲームセットは聞こえない～超能力野球奇譚～

283球目 エラーの連鎖が止まらない

　5回表、代打で出た木更城（きさらぎ）が三塁手（サード）、三塁手（サード）の尺村（しゃくむら）が一塁手（ファースト）、一塁手（ファースト）の洗足（せんぞく）が遊撃手（ショート）に替わった。

「さぁ、みんな！　ガンガン打ちましょう！　この試合勝ったら、バーベキューするよ！」

「カァー！　打つでぇ！」

　火星（ひぼし）から始まる下位打線だが、肉の誘惑で目が燃えていた。火星（ひぼし）はバットを一心不乱に振ってから、打席に入る。

「肉欲望！　絶対安打！」

　いつもはボールをじっくり見る火星（ひぼし）が、初球から打つ。三遊間の猛烈なゴロだ。

　しかし、サードの木更城（きさらぎ）が倒れ込むように捕り、瞬時に起き上がって一塁へ投げる。

「アウト！」

「うわぁ！　あいつ、守備職人かよ！」

「何で、あんなに上手い子がベンチスタートなん？」

　俺達は頭を抱えて絶叫する。

　次の烏丸（からすま）さんは、ファーストへの平凡なゴロを打つ。これでツーアウトか。

「あれれー？」

　何と、尺村（しゃくむら）がトンネルしてくれた。前の回までファインプレーしていた彼女らしからぬミスだ。

　取塚（とりつか）さんはファースト前へ送りバント。尺村（しゃくむら）はボールをお手玉してから、セカンドへ慌てて送球する。烏丸（からすま）さんの翼がセカンドのタッチをかいくぐり、1・2塁オールセーフだ。

「尺村（しゃくむら）くーん、こっち来なさーい」

　摩耶（まや）の監督がエラー連発の尺村（しゃくむら）を呼んだ。ここで交代だろうな。監督と尺村（しゃくむら）がベンチの奥に隠れて、何やらやり取りしている。

「さぁ、気合入れて頑張って下さいよー」

「わっかりましたぁん！」

　尺村（しゃくむら）が意気揚々（ようよう）とベンチから飛び出してきた。あんなザル守備で交代させないなんて、マジかよ……。

（続く）