282球目 バンザイエラーはしたくない

 あー、肩が超痛い。早く、この回終わってくんないかなぁ。



 パーフェクトも、ノーヒットノーランも逃し、マウンドをゆずってしまえば、試合がどうでもよく思えてくる。



「ライト!」



 えっ? 何か、ボールがこっちに来てる? 俺は両手を上げてから、顔を上げる。うおっ、まぶし! 太陽光で目がああああ!



「フェア!」



 あれ? ボールはどこに? 振り向けば、俺の後ろにボールが転がっている。やっちまったぁ!



水宮みずみやのアホ!」



 快足の千井田ちいださんがボールを拾って、中継の津灯つとうへ投げる。ホームをうかがっていた置堀おきぼりは三塁で止まった。



 スコアボードに2の数字が刻まれる。



「ボーっと守ってんじゃねーよ!」



 千井田ちいださんが顔を真っ赤にして、にらみつけてくる。



「ごっ、ごめんなさい!」


「まっ、2点ぐらいやったら、すぐ返せるやん」


「そっ、そうですね!」



 次の古栗こくりは三振に倒れて、俺達の攻撃へ移る。



 2点なんか、ワンチャンスで返せるはず!



(続く)

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