276球目 メカクレ女子は動じない

 摩耶まや打線は全く歯ごたえがない。



 1番の洗足せんぞくはバットがクルクル回り、2番の花合はなごうはキャッチャーフライで手がしびれていた。



 3番の尺村しゃくむらはいかにも打ちそうなオーラが出ている。3試合で10打数2安打だが、その2安打は2ベースヒットと3ベースヒットなので、油断は禁物きんもつだ。



 初球は外角低めにアウトローストレート。彼女は1ミリも動かない。



「ストライク!」



 お次はインコースにストレートか。強打者なら絶対に見逃さない。



「ストライク、ツー!」



 今度も全く動かない。インコースが苦手なのか、変化球待ちなのか。



 3球目は低めにチェンジアップ。バットを振れ!



「ボール」



 全く打つ気を見せない。長い前髪で両目が隠れているから、どんな表情しているかわからなくて、実に不気味だ。



 4球目はど真ん中にストレート。俺の速球に驚け!!



「ストライク、アウト!」



 結局、1回もバットを振らなかった。悔しがるそぶりも見せず、早歩きでベンチへ戻っていく。



 摩耶まやの選手は死んだ魚みたいな目でグローブをはめて、グラウンドに出てきた。こんな生気のないチームと対戦するのは、生まれて初めてだ。


 

 摩耶まやの応援団も、ひな人形みたく全く動かず喋らない。あの人達、生きてるよな?



水宮みずみや君、サード狙いは撤回てっかい。フリーで打って」



 グル監が笑顔で指示してくる。



「了解しました!」



 摩耶まやの連中がビックリするホームラン打ってやるかぁ!



(続く)

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