271球目 黒猫は不吉じゃない

 終業式の翌日、とんでもないニュースが浜甲はまこう野球部を襲う。



 何と、不死身の赤鬼・番馬ばんばさんが、交通事故にあったというではないか。



 俺と津灯つとう飯卯いいぼう監督は、一目散に病院へ向かう。命に関わる大ケガじゃなければいいが……。



 俺達が病室に入ると、左足にギブスを巻いた番馬ばんばさんが漫画を読んでいた。



「おう、何や? けったいな顔しよってからに」



 声はいつも通り、ドスの利いた低い声だ。問題なさそう。



番馬ばんば君、骨折と違うよね?」


打撲だぼくでっせ、グル監。3日ぐらい絶対安静したら治るって」


「3日かー、良かった……。3日後!?」



 3日後だと、すでに4回戦は終わってる。次の試合はチーム1のパワーヒッター・番馬ばんばさんを欠くことになるのか……。



「交通事故に気ぃつけろって、先生や夕川ゆうかわさんが言うてたのにぃ!」


「すまん、キャプテン。自転車乗っとったら、黒ネコひきそうになってなぁ。そんで、よけたら、電柱に足ぶっつけてもて」


「車に当たったワケじゃないんですね。骨折しなくて良かったですけど」



 ネコをかばって打撲だぼくするとは、渡る世間に鬼はないってか。



「それじゃあ、私達は学校に帰ります。絶対に動いちゃダメよ!」



 グル監が人差し指同士で×印を作る。



 番馬ばんばさんは「オッス!」と、空手の押忍オスのポーズで答えた。



 ここまでは、まだ浜甲はまこう野球部は明るかった。まさか、あんなことやこんなことが起きてしまうとはなぁ……。



(続く)

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