5回表 悪霊が来る! VS 恐怖と怪奇の摩耶高校

268球目 一人二役は尋常じゃない

 浜甲はまこう学園野球部が雨中の熱戦を制した翌日は、終業式である。



 この日に通知表が渡され、成績が悪かった者は夏休みの補習を受けなければならない。



 特に、3年生は1学期の最終成績で受験できる大学が変わってくるのだ。



 烏丸からすまは恐る恐る通知表の数字を確かめる。



「9、8、8、9、よっしゃ! 上位30パーや!」



 父から文武両道ぶんぶりょうどうつらぬけと口うるさく言われているので、彼は胸をなでおろす。胸ポケットから津灯つとうの写真を取り出し、口ばしキスをかわした。



山科やましなの成績はどないや?」



 山科やましなが女子に取り囲まれていても、彼はお構いなしに声をかける。



「フフフ。僕は野球でスポーツ推薦すいせん目指すから、関係ないね」


「そうそう! 山科やましな様はバスケでも野球でもスターやもの!」


「次の試合もたくさん打って下さいねー」


「もちろん。僕が華麗かれいに打って勝つで―」



 山科やましなは白い歯を輝かせて、Vサインを見せる。女子達は黄色い声を上げてとろける。



「あれー? 山科やましなって、しょぼいヒット打っとるイメージしかないんやけど」


「何を言う! 僕はきっちり3割打っとるよ。君はどうなんだい?」


「えっと……、この前はノーヒットやったけど……、次は打つ!」



 烏丸からすまはホームランを打って、愛しの津灯つとうキャプテンに猛アピールするつもりだ。



「ムリだヨ。浜甲はまこう摩耶まやに勝てナイ」



 陰気な男がコッペパン頭の人形の口を動かしながら、腹話術で話しかけてきた。



形代かたしろぉ、その根拠こんきょはどっから?」


「コペー君、摩耶まやの強さを教えたげて」


「イイヨ。摩耶まやはコワイ、ヤバイ、アイツがいるカラ、強い高校に勝ってキタ。ダカラ、浜甲はまこう負ける」


「あいつとは誰のことなのかな?」


「おっと、ソレは教えられナイ」



 人形が口をつぐんで喋らなくなる。



「ごめんね。それ以上のこと言うと、俺とコペー君の命が危ないから。じゃあね」



 形代かたしろは人形を左手につけたまま、教室を去って行った。



「何よ、あいつぅ、キッモー!」


山科やましな様! 摩耶まやのピッチャー、ガンガン打って下さいね!」


「もちろん! 3安打以上打ってみせるよ」



 お気楽な山科やましなは女子達に猛打賞もうだしょうを約束する。一方、烏丸からすま形代かたしろ人形コペー君の言葉が気になっていた。



摩耶まやのヤバイ奴……。どんな奴やろか」



(続く)





※クイズタイム!

 公式戦3試合終了時点で、浜甲はまこう学園の中で1人だけノーヒットの選手がいます。次のA~Dから1人選んで、お答え下さい(175~200球目、205~233球目、235~267球目を読み返せばわかるでぇ)。



A.烏丸からすま  B.東代とうだい  C.取塚とりつか  D.火星ひぼし 



 正解者には、正解者が考えたオリジナル選手orオリジナル高校の出場権が与えられますよー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る