256球目 4番の仕事を果たせない

 オラゴン星人の肌は水をはじくらしい。俺の腕や腹に全く水滴すいてきが付かない。あと、この出っ腹のおかげで、インコース攻めはない。山科さんを無死1・2塁で迎えたくないだろうから。



 狙いは外のコースだ。レフトへ流し打ってやる。



「うおりゃあああ!」



 雄叫おたけびとともに、外へ速いボールを投げてくる。狙いどお、うっ、逃げた。シュートがバットから逃げた。



「ストライクッ!」


「ショート!」



 キャッチャーがショートの園田そのだへ送球。津灯つとう懸命けんめいにスライディング。判定は?



「セーフ、セーフ!」



 よっしゃ! 俺のオラゴン星人腹によって、キャッチャーの送球が少し遅れたぞ。ナイスボディーだ。



 2球目はどこにくるか。キャッチャーは外に構えているが、ウソ、真ん中高めにキター!



 打球はライトの方へ飛んでいく。同点ホームランになるか?



黒炭くろずみ、あきらめるなぁ!」



 龍水りゅうすいが声を出した後、さらに雨の勢いが増す。打球が雨のせいか、フェンス手前で失速し、黒炭くろずみのグローブの中に収まった。



「クッソー! あとちょっとだったのにー」


ドントリグレット悔やまないで! ミス・ツトーがタッチアップでサードに行きました」



 俺の一打は無駄にならなかったか。良しとしよう。



華麗かれいに打つ!」



 山科やましなさんが悪藤あくどうの初球をレフト前へ運び、1点を返した。



 その後、烏丸からすまさんがファーストフライ、火星ひぼし四球フォアボール東代とうだいがショートゴロで1点止まり。



 でも、1点差なら追いつける。まだまだ勝機は浜甲にあり!



(続く)

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