241球目 先制点が取れない

 ライトオーバーのタイムリーヒットになる。いきなり2点先制は幸先いいぞー。



 俺は一塁を蹴って二塁へ向かう。ボールはまだ来ない。三塁まで行けるか?



「アウト!」



 えっ? 誰がアウトになったんだ? ホームを見れば、真池まいけさんがキャッチャーにタッチされていた。



「ちょっとー! デヴィッドさーん!」


「ソーリーソーリーや。ハハハハハ」



 真池まいけさんは悪びれることなく、ベンチへ小走りで戻る。まだ2死2・3塁だから、チャンスは続いてるけど……。



 しかし、山科やましなさんがピッチャーフライに倒れて1点も入らなかった。



 俺と津灯つとうはしょんぼりしてベンチへ戻る。



「ミスター・ミズミヤ! マンガのライトはクールですよ」


「ライト? あのちっこい奴が?」



 ライトの黒炭くろずみは小学生と見間違えるぐらい、小兵な選手だ。



「あの打球をダイレクトキャッチせず、クッションボールにしてからキャッチし、リュースイへスローしました。モーメント一瞬ジャッジ判断はグレートです」


「確かに。バッターよりランナーのアウトを優先するって、強豪校の選手みてぇだな」



 黒炭くろずみの打順は6番だが、この試合の要注意人物かもしれない。



(続く)

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