4回裏 喧嘩上等! VS龍踊る満賀高校

234球目 理事長夫人の執念がえげつない

 浜甲はまこう学園の理事長室で、アシンメトリーの茶髪の男が、新聞を広げて読んでいる。彼は来年の浜甲ラグビー部監督予定の園田そのだ太郎丸たろうまるだ。



柳生やぎゅう夫人、ホントにこのチームを廃部にするんですか?」



 地方面の浜甲はまこう野球部の勝利を伝える記事を指差しながら、彼は眉をひそめている。



甲子園こうしえんに行くには、あと6回勝たないとダメよ。超高反発ちょうこうはんぱつバットの八木やぎ学園、肥満化ひまんかミルクの六甲山ろっこうさん牧場には、勝利の執念しゅうねんがなかった。まっ、甲子園こうしえん出場経験のない所だから、仕方ないわ。でも、これから当たるのは、甲子園を本気で目指している連中だから、大丈夫よ。大丈夫!」



 理事長りじちょう夫人は全く姿勢を変えず、とある一点を見つめたまま早口でしゃべった。そんな彼女を見た園田そのだは、心の中で冷や汗をかいていた。



「つ、次の満賀高校はラフプレーで有名で、俺のおいっ子もいるから、今度こそ負けそうですね」


「そうね……」



 彼女はそう言って、切り抜いた新聞記事をライターで燃やした。



(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る