230球目 ヒッティングかバントかわからない

 ところが、一塁審判は両手を水平に広げた。



「セーフ、セーフ!」


「なっ、何ぃ!?」


「えっ? 僕、ちゃんと捕りましたよー」



 大縞おおしま安仁目あにめは塁審の判定に噛みつく。



「足、足! 君ぃ、ちゃんとベース踏んでなかったよ!」


「あっ、あああ、マジでござるかー」


「この豚足! バウワウ!」



 舌を出して照れ笑いを浮かべる安仁目あにめに対して、大縞おおしまは狂犬のように吠えまくる。



 かろうじて首の皮一枚つながった浜甲はまこう打線は、7番の真池まいけが打席に立つ。



 真池まいけは、いかに美しくセーフティーバントを決めることしか考えていない。自分がアウトになったら終わりというマイナス思考はない。イケイケのロックンローラーだ。



 大縞おおしまのストレートを一塁方向へプッシュバント。前進した安仁目あにめのひざに当たり、ヒットになった。



「決まったぜ! 俺のデンジャー・ゾーン!」



 ヒットの連鎖れんさは止まらない。続く火星ひぼしはバスターでセンター前にヒットを放つ。2死満塁のチャンスに。



 9番取塚とりつかは夕川の霊力を借りず、自らの力で打席に立つ。彼は意表を突くセーフティーバントをして一塁へもうダッシュ。



「今度はバント。モーいやっ!」



 戸神とがみの送球が乱れて、一塁でアウトに出来なかった。浜甲はまこう打線の四連続ヒットで、2-5になる。



 ここで、六甲山ろっこうさんはタイムを取り、9人全員と伝令の舞矢まいやがマウンドに集まった。



「相談してもムダ」



 宅部やかべはバットを軽く振って、長打を狙う。



「お待たせしました❤」



 戸神とがみ球審きゅうしんにウインクして、ホームの後ろに座った。



「プレイ!」



 戸神とがみは立ち上がり、大縞おおしまのボールを捕る。




「け、敬遠?」


「うん❤ だって、宅部やかべ君怖いんだモン❤」



 満塁の敬遠でも、まだ六甲山ろっこうさんは2点リードできる。六甲山ろっこうさんナインはヒットメーカー・宅部やかべより、チーターガール・千井田ちいだとの勝負を選択したのだ。



「あっ、あたいをナメたなぁ、おのれー!」



 千井田ちいだはチーター化して、怒りで全身が震えていた。



(続く)

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