229球目 セーフティーバントが成功しない

 戸神とがみミルクの肥満化ひまんか効果が切れたことで、六甲山ろっこうさんナインに動揺が走っていた。



 特に、大縞おおしまは骨っこをかんで、うろうろしている。



「まさか、雨が降るなんて、天気予報の嘘つきめ!」


大縞おおしまキャプテン、落ち着いて下さい。9回2アウト2ストライクから4点取れますぅ? しかも下位打線ですよ」



 豊武とよたけの言葉を聞いた大縞おおしまは骨っこをバッグの中にしまう。自分の鼻を舌でなめ、グローブをパンパン叩く。



「せやな。7連続ヒットや3連続ヒットからのホームラン浴びへんかぎり、六甲山ろっこうさんの勝ちは確実や!」



 グラウンド整備が終わり、試合が再開する。



 速い球にめっぽう強い番馬ばんばに対して、大縞おおしまはスローボールを選択する。



 番馬ばんばはヒッティングからバントに切り替え、三塁前に転がす。



 しかし、打球はイージーゴロだ。



「よっしゃ! 名護屋なごや、捕れぇ!」



 名護屋なごやはコケコケ言いながらボールを捕り、一塁へ。安仁目あにめは精一杯手を伸ばす。



「うがああああああ!」



 激走する番馬ばんばの手前で、安仁目あにめのグラブにボールが入った。



 番馬ばんばは足がもつれて、一塁ベースに倒れ込む。



「チキショー!」


「ああ、俺達の夏が……」



 番馬ばんばは一塁ベースを拳で叩き、ベースコーチの水宮みずみやは頭をかかえてうずくまる。



 かくして、浜甲はまこう学園野球部の戦いは、2回戦で終わった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る