227球目 ボーダーコリーは白黒つけない

「敵チームをデブに変える卑怯ひきょうなチームに負けるんやぁない! 勝て勝て浜甲はまこう!」



 スタンドから八木やぎ学園の木津きづが声を張り上げる。卑怯ひきょうって、お前が言うかー。インチキバット使ってたクセに。



「見たところ、オーシマは134キロのオーソドックスなピッチャーですブハ」


「バットの始動を速くしたら打てるフガ」



 この重たい体にも大分慣れてきた。腰をひねれないから長打は難しいが、シングルヒットなら任せてくれ。



 マウンド上の大縞おおしまは舌を出して、ボールをじっと見つめている。



犬縞いぬしまキャプテン、ボールをくわえたらアカンよー。グフフフフフ」


「黙れ! 俺は大縞おおしま、ブラックオアホワイトの使い手や!」



 大縞おおしまは大きく振りかぶって投げてくる。速いが、打ち頃!



「ファール!」



 少し振り遅れたが、感触はいい。次こそセンターかライト前へ運ぶ。



 2球目もストレートだ。



「ファール!」



 今度は真後ろのファールだ。タイミングはバッチリ。後は、芯を食えば、ヒットに出来る。



 3球目も豪速球ばりのモーションで投げてくる。



 打つ! あっ、遅い。



 俺のバットは空回り。ストレート時と寸分違わぬフォームで、スローボールを投げてきやがった。



「ストライック、アウ!」



 最終回に緩急かんきゅうを上手く使える投手が出てくるなんて……。もうオシマイだぁ……。



(続く)

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