210球目 ニワトリ男は電気羊の夢を見ない

「コケコケコケコッコー!」



 ニワトリ男は両翼を広げて何か叫んでる。イライラするなぁ、もう。



「君ぃ! 静かにしなさーいっ!」


「あっ、すみません」



 名護屋なごやが球審に平謝りする。



 って、日本語しゃべれんのかよ! クッソ―、なめくさりやがって。



 名護屋なごやは送りバントの構えだ。今度は本当にバントだろうな? 半信半疑のスライダーを投げる。



 ニワトリ男はバントの姿勢のまま、スライダーを見送る。ストライクゲット! だが、その間に2塁ランナーの安仁目あにめが3塁に到達していた。



「OK、OK」



 東代とうだいは無理に笑顔を作っている。ベンチからはスクイズ警戒けいかいのサインが出ている。今日の俺は球の勢いはないが、コントロールはいつも通りなので、3球ぐらい外してもいいか。



 俺が投球モーションに入ると同時に、3塁ランナースタート。よし、スクイズ外しの大ボールだ!



 敬遠球ぐらい高いボールを投げられた。これでツーアウトゲット、と思いきや、ニワトリ男が大ジャンプ。



「ケッコウ!」



 ジャンピングスイングでクソボールを打ち、ライトへ運ぶ。



 バントかと思えばヒッティング、ヒッティングかと思えばバント、何なんだ、このチームは!?



 さらにライトの火星ひぼしが打球をお手玉する。ああ、またツーベースヒットですか。いや、火星ひぼしは、名護屋なごやが2塁付近まで走るやいなや、宅部やかべさんへ電光石火の送球だ。



「アウト!」


火星ひぼし、ナイスプレイ!」


「地球人的刺殺!」



 火星ひぼしは腹を肉まんみたいにふくらませて、親指を立ててみせる。ずる賢いプレイが出来るとは、彼もだいぶ地球人らしくなってきたな。



 次の夢見ゆめみは全身にモコモコ羊の毛が生える。起きてるのか寝てるのかよくわからない細目で、打つオーラは全くない。



 全てストライクゾーンに投げたのに、ことごとくボールがシュート回転してストレートのフォアボールになった。これは夢見ゆめみの超能力なのか?



 7番の蔵良くらよしを三振にしとめ、何とか六甲山ろっこうさん打線を3点で抑えた。



(続く)


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