207球目 太ったチーターは亀にも勝てない

犬縞いぬしまキャプテン、ナイス!」


大縞おおしまや!」



 大縞おおしま豊武とよたけに吠えるように訂正する。それを見た内野陣がゲラゲラ笑う。余裕しゃくしゃくな感じだぜ、チキショー。



ホワイ何で、あのキャプテンだけウェイトゲイン肥満化しなかったのでしょうかブホ」


「ぎっど、毒のない1づの瓶を選んで飲んだに違いないフガ」


「でも、何の迷いなぐ、すぐ取っただよ」



 津灯つとうの言うとおり、あらかじめ“アタリ”がわかっていても、どの位置か思い出す時間が必要だ。例の牛乳を飲んでも太らない体質か?



「ワンナウト、ワンナウト、しまっていこうね❤」


「あだいをこんあブチャイクな姿にしくさっでぇ。殺すやんげ!」



 千井田ちいださんは怒りで震え、真ん丸なチーターに変身した。首回りはドーナツを挟んだら隠れるぐらい、たっぷり肥えている。



「こっから左3人かー。オレ、左バッター苦手やわぁ」



 豊武とよたけは目をこすってダルそうに言うも、テンポ良いモーションで投げてきた。



 千井田ちいださんは「グオオオオ」と猛獣の雄叫びを上げて、ショートへの強いゴロ。細目のショートが前にはじく。いつもなら内野安打だ。



「アウト!」



 デブチーターの足では、間一髪アウトに終わる。



「走るのしんど……」



 大量の汗を流して亀のごとく歩む千井田ちいださんには、サバンナのスプリンターの面影がどこにもない。



 津灯つとうもピッチャーライナーに倒れて、初回は0点だった。



(続く)

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